「STEAM教育」による 新たな学びとイノベーション型人材の育成
~世界の教育の潮流、そして、「令和の日本型学校教育」でも推進~

STEAM教育とは何か

STEAMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(アート、リベラルアーツ)、Mathematics(数学)の5領域の頭文字をとって造られた言葉です。理数系教育の充実を目的としたSTEMに芸術や教養である「A」が加えられSTEAMとなりました。

2011年に米国でオバマ大統領(当時)が一般教書演説においてSTEM教育を国家戦略とすることを発表し、教育省がSTEM教育を推進しました。その後、全米工学アカデミーがSTEM教育の進化形としてSTEAM教育を提唱しました。STEAM教育は世界の教育の潮流となっています。  日本のSTEAM教育は、欧米諸国、中国、シンガポールと比較して遅れていましたが、Society5.0の実現に向けたイノベーション型人材の育成を目的にようやく先進校で新たな学びがスタートしたところです。

今後は、2022年度からの高等学校学習指導要領の改訂に伴い新たに創設される総合的な探究の時間においてSTEAM教育に取り組む学校が増えることになりそうです。

STEAM教育の実践

私は学校法人大妻学院大妻中学高等学校のSTEAM教育を管理職として、推進しています。2021年度はSTEAMを中心とした探究講座を開講しています。高校2年生が全員取り組んでいます。STEAMの5領域の研究者を招き、教員とともに生徒一人ひとりが主体的・対話的な学びができるように学習環境と教育体制を構築しました。  世界的に注目を集めているデザイン思考のワークショップも実施し、杉浦正吾先生(東京都市大学特任教授)が担当しました。

また、私はSTEAM教育と大学入試との関連についてもZ会ソリューションズと連携し、研究しています。  STEAM教育の集大成として、高校2年生は4000字の課題研究論文を執筆します。アカデミックスキルズについて、青山学院大学アカデミックライティングセンターの先生から論文のまとめ方・書き方について学びます。テキストはNPO法人グローカル・アカデミー代表理事の岡本尚也先生が書かれた『課題研究メソッドSecond Edition』(啓林館)を使用しています。大妻高等学校では生徒一人一台タブレット端末を所有していますので、生徒は教員の指導のもとで研究を進め、論文執筆はタブレット端末で行います。論文添削及び指導コメントは研究者やジャーナリスト等で構成される課題研究論文添削指導チームがGoogle for Educationを使い、オンラインで行います。

STEAM探究講座以外にも2021年度から医療系探究講座も開講しています。現場で活躍する医師や医学研究者を招いた講座及び私が担当する医療系小論文・面接講座を年10回実施します。他にも、リクルート、日本生命、小林製薬、NECソリューションズイノベータと連携した企業探究講座、学校法人電子学園情報経営イノベーション専門職大学と連携したイノベーション・プロジェクトを開講します。

STEAMで 大学入試問題を 解いてみよう

近年、大学入試においてSTEAMの思考や表現を使って解く入試問題が出題されるようになっています。ここでは、慶應義塾大学環境情報学部・総合政策学部・筑波大学情報学群の入試問題を取り上げます。  STEAMの思考や表現を使って入試問題にチャレンジしてみてください。

慶應義塾大学 環境情報学部・ 総合政策学部・一般入試・小論文 問2

あなたがこの世の中で不条理だと感じていることを、理由ととも に15個挙げる。 問3 問2で回答した不条理のうち3つを取り上げ、その解決の方向 性と方法について、解決のカギとなる技術革新、アイデアを含め、できるだけ具体的、定量的、かつヴィジュアルに説明する。

筑波大学情報学群情報科学類・推薦入試・小論文 2020年

東京オリンピック・パラリンピックの期間中は多数の見物客が 宿泊施設と会場の間や、会場と他の会場の間を移動し、通常の通勤客の移動と相まって大変な混雑が発生すると予想される。このような混雑やこれに起因する諸問題を解消するために役立つ情報技術のうち、事前に役立つものや期間中に役立つものを考え、600字 以内で説明しなさい。

STEAM教材で学ぼう。 政府も推進

日本ではSTEAM教育がスタートしたばかりであり、STEAM教育の教材はほとんど出版されていないのが現状です。ここでは、私が監修・執筆し、2021年8月に出版予定のSTEAM探究教材『FUTURE』Vol・3 STEAM編(SRJ)をご紹介させて頂き学習テーマについて考えていきましょう。

『FUTURE』は、予測困難な社会の中で、生徒が自ら考え、調べ、一緒に学ぶ仲間との議論の中で、自分自身の最適解を見出し、自分と向き合うこと、未来を考えるきっかけにつなげる教材です。また、①思考力・判断力・表現力を養う、②進路・キャリアの選択肢を増やす、③学び続ける姿勢や方法を身につけることを目的にした教材です。教材はワークシートであり、授業の流れは、①文章の読み取り/課題の設定⇒②課題の整理⇒③課題の共有・議論⇒④思考のまとめ・論述と展開します。『FUTURE』Vol・3 STEAM編はSTEAMの5領域を網羅した20テーマから構成されています。内容だけでなく、STEAM教育の思考・判断・表現などの手法を重視しています。

『FUTURE』Vol・3 STEAM編のテーマ
①STEAMって何? ②わくわくする研究はどっちだ?
③科学探偵になろう
④金属オリンピックを開催しよう
⑤出かけたいけど服がない!
⑥お腹の赤ちゃんのこと、どこまで 知りたい?
⑦情報は3つの顔を持っている

⑧新しいペットボトルを作ろう
⑨飛ばない紙飛行機をしっかり作ろう
⑩できるだけ高く、しかも確実に!
⑪AI先生と人間先生、どちらに教 わりたい? ⑫戦争とAI、ロボットと人間が戦う世界
⑬イスの足って何本がベスト?
⑭建築士になったつもりでプレゼン
⑮ドローンタクシーを宣伝しよう
⑯新しい国の名前は? ⑰数字で仲間探し
⑱迷路で真剣勝負!
⑲STEAMで考える大学入試問題⑳学びの設計書

政府が進めるSTEAM教育 中央教育審議会「「令和の日本型学校教育」の構築を目指して(答申)」より抜粋 (4)STEAM教育等の教科等横断的な学習の推進による 資質・能力の育成 ・STEAMのAの範囲を芸術、文化のみならず、生活、経済、法律、政治、倫理等を含めた広い範囲で定義し推進することが重要 ・文理の枠を超えて教科等横断的な視点に立って進めることが重要 ・小中学校での教科等横断的な学習や探究的な学習等を充実 ・高等学校においては総合的な探究の時間や理数探究を中心として STEAM教育に取り組むとともに,教科等横断的な視点で教育課程を編成し、地域や関係機関と連携・協働しつつ、生徒や地域の実態にあった探究学習を充実STEAM教育に関する 推薦図書・推薦教材 ●ヤング吉原麻里子・木島里江著『世界を変えるSTEAM人材~シリコンバレー「デザイン思考」の核心』(朝日新書) ●森弘達監修・著、斉藤健・中村智治・野村佳史・比嘉華奈子著 『FUTURE』Vol・3 STEAM編(SRJ) 2021年8月出版

<著者>
森 弘達(もり ひろたつ)先生

学校法人大妻学院大妻中学高等学校主幹 国立大学法人東京学芸大学大学院教育学研究科(教職大学院)・ 学校法人電子学園情報経営イノベーション専門職大学客員教授 学校法人東京音楽大学指揮研修講座研修生・ 東京都国分寺市介護保険運営協議会委員(国分寺市長委嘱) 国際バカロレアディプロマプログラム(IBDP)アドミニストレーター。学校法人昭和薬科大学附属高等学校・中学校教諭・進路指導部主任・生徒指導部主任・高校3学年主任・吹奏楽部顧問・ディベート部顧問、学校法人武蔵野大学附属千代田高等学院副校長、一般財団法人日本私学教育研究所研究員を歴任。著書に『ハイスコア!共通テスト攻略現代社会』(Z会)、『特化型小論文チャレンジノート志望理由・自己PR編』(第一学習社)、探究教材『FUTURE』volume.1・2(中高生版)・小学生版(SRJ)などがある。2021年夏にSTEAM探究教材『FUTURE』volume.3(SRJ)を発行予定。