2021年、日本からオオムカデの仲間が新種として記載されました。その名もリュウジンオオムカデ。日本最大のムカデで、沖縄島、渡嘉敷島、久米島、八重山諸島、台湾に生息する琉球列島固有種です。黒い胴部に翡翠色歩脚を持つとても美しいムカデで、山地の渓流やその周辺に生息しています。本種の特徴というと、まずはその大きさです。なんと全長25センチを超える巨体を持っています。先ほども述べたように本種は日本最大のムカデなのですが、世界レベルで見ても非常に大型です。体は分厚く、背板は鎧のように重厚で、太く力強い歩脚を持ちます。歩く姿はまるでジブリに出てきそうな古代兵器や怪物のようです。

リュウジンオオムカデの成体    とても重厚な体を持つ

このムカデの和名を漢字で書くと「琉神大百足」となるのですが、これは生息地である琉球列島と、沖縄に伝わる「ニワトリとムカデと龍」という昔話をかけて付けられた名前です。命名者の愛と熱意を感じる非常に素敵な名前です。
色や大きさだけでも魅力的な本種ですが、その生態も大変面白く、なんと水中を泳ぐことができ、テナガエビ類やサワガニ類を捕食することが知られています。実際、筆者も野外で本種が泳ぐ姿を何度も目撃しています。本種は学名をScolopendra alcyonaと言い、種小名のalcyonaというのはギリシア神話に登場するカワセミに姿を変えた神アルキュオネーに由来しています。

カワセミのような色と生態になぞらえて、本種にこの学名が与えられました。もちろん一般的なムカデのように地上を歩くこともでき、昆虫などを捕食することもできます。まさに水陸両用のムカデなのです。
沖縄島ではやんばるの渓流などでその姿を観察することができます。時折、林道や登山道に出現することもありますが、数は少なく遭遇するのは稀です。見かけた際は是非、その神々しい姿を観察してみてください。ただし、本種には毒があるため咬まれないように気を付ける必要があります。加えて、現在は種の保存法で捕獲等も禁止されているので、観察の際は細心の注意を払いましょう。

頭を持ち上げながら歩く成体

頭部の拡大写真
後ろにたなびく黄金のひげはまさに龍

これまでに遭遇した中で最大の個体
全長約27cmと規格外の大きさだった

リュウジンオオムカデの幼体
成体よりも脚の青みが強い

仲間 信道なかま のぶゆき
沖縄生まれ沖縄育ち。好きな生き物は多足類(ムカデ、ヤスデ、ゲジなど)、昆虫、爬虫類など広く。専門はタマヤスデの分類。多趣味で、バイクいじり、古物収集、レコード鑑賞などが好き。琉球大学大学院農学研究科修了。修士(農学)

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