Ⅰ.はじめに
図1.日本心理学会ホームページ
https://psych.or.jp/
Ⅱ.多様な依存症
様々なテーマのなかでも特に印象的だったのは「依存症」をテーマにしたセッションだ。
広い会場は多くの聴衆で埋め尽くされており、関心の高さがうかがわれた。「依存症」といっても、研究テーマは、アルコール依存、買い物依存、ゲーム依存、性依存、薬物依存など多様であることに驚いた。さまざまな症状や専門用語を聞きながら、素人ながら、問題意識を共有することができてとても勉強になった。その中で、特に、記憶に残ったことは、「依存症」にある人と、まわりはどのようにかかわっていけばいいか、という問題である。
たとえば、自分の価値は、周囲の基準だけを頼りに判断しようとする。そのうえ、自分がどうしたいかではなく、周囲の期待にこたえることだけに必死になる。もちろん、周囲の人に認めてほしいとか、好かれたいと思うのは、人間として自然なことである。
しかし、その結果として、自分自身がどんどん苦しくなる。一生懸命すればするほど状況が悪化する。そんなとき、「共依存」の問題が発生しているかもしれない、というのである。「共依存」という共通言語を実感して学会が終った。そして、研究者仲間を見送ったとき、ふと次の句がでてきた。
図2. 共依存とは??
https://kaigo-madoguchi.com/
Ⅲ.おもしろき
こともなき世を
おもしろく・・・
これは高杉晋作(1839‐1867年)が「おもしろくもないこの世の中をおもしろく生きていくために、あなたならどう考えるか?」と望(ぼう)東尼(とうに)へ問いた上の句である。望東尼は、これを受けて、下の句を「住みなすものは心なりけり」と、詠んだ。
「おもしろき こともなき世を おもしろく 住みなすものは心なりけり」
おもしろく生きられるかどうかは、現実が決めるのではない。あなた(私)の心が決めるのだ。環境や現実が自分をつくるのではない。あなた(私)の決断(心)が自分をつくるのである(図3.第3章参照)。
だからこそ、この句は、私たちに何のために生きるのか、そして、何のためによりよく生きていくのか、を、問い続けている。そして、私は思った。
みんなそれぞれ、大小にかかわらずさまざまな難をかかえている。難が有るからこそ有難い人生である。私は、「ありがとうございます」と言う日本語には、「有難うご財増す」の意味を持たせている。「ありがとうございます」を多用すれば、私は、苦難を乗り越えた後の「財が増す」と信じている。
図3.ひすいこたろう『今日は人生最悪で最高の日』SB Creative、2024年
儀間 敏彦(ぎま としひこ)
東海大学 教授 湘南キャンパス教育開発研究センター所属 那覇市出身
図2 ぎまとしひこのホームページ
(https://richardgima.com/)