はじめまして、数学カフェの芦澤太一と申します。数学カフェのスタッフといえば、もともと数学が好きで、専門的に数学を学んできた人ばかりではないか、と思うかもしれませんが、そんなことはありません。私のように数学に明るくない人もいます。そんな私が、どういう経緯で数学カフェに関わっているのか、それを説明するために、少し長くなりますが、自己紹介をしたいと思います。
中学を卒業してすぐ上京
卒業後に上京!?」と思うかもしれませんね。私の地元は札幌のような大都市でなく、平取町という小さな町で地元には高校が一つしかありませんでした。その一つしかない高校以外への進学を希望する生徒は毎年数名おり、そういう人たちは中学卒業と同時に親元を離れます。ただ道外の高校に進学を希望するのは私だけでした。ちなみに私の出身中学校は、私が在籍していた当時の全校生徒数は40人程度でした。現在の沖縄県南大東島の中学校と規模は同じくらいです。
なぜ、中学卒業後に上京したのかと言いますと、スーツを着て働く仕事に憧れがあったからです。私の実家は農家でした。農業は食べ物を生産し、人の命を支える重要な職業なのですが、当時の私には偏見がありました。なぜ偏見があったかというと、アニメ「サザエさん」に登場する磯野波平さんとフグ田マスオさんは、仕事に行く時はビシッとしたスーツを着ていく一方で、父の仕事着は汚れていて、当時の私にはかっこ悪く思えたのです。
この状況を打破したいとずっと考えており、幸運なことに母親の実家が横浜にあり、下宿先として受け入れてくれることになりましたので、一刻も早くこの状況から脱したいという思いが強かったのもあって、中学卒業後に上京する道を選択しました。
こうして神奈川県の公立高校に無事入学して2002年3月に高校卒業、同年4月に某大学の工学部に入学しました。元々、物を作ることに興味があり、その中でも当時はIT系がおもしろそうだと思ったので工学部を選び、大学時代はプログラミングシステム分析/設計を学んでいました。当時、学んだ数学は、大学1年生の時に微分積分、線形代数、微分方程式と、一般教養科目の単位取得のために受けたものです。今となってはほとんど覚えていません。そして、2006年に大学を卒業し、IT系の会社に就職しました。その後、3度の転職(職種は一貫してIT系)を経て現在に至ります。
数学を楽しむ仲間との出会い
私が数学カフェに出会ったのは2017年頃、数学カフェの「確率・統計・機械学習」の講演情報を友人が発見してくれたのがきっかけでした。この分野はAIやIoT、現在ではChatGTPなどの生成AIに応用されているホットな分野で自身の職業にも関連していると思い参加することにしました。長年プログラミングをしてきたので、論理的思考は身についていると思っていました。「確率・統計・機械学習」の講演に参加してみて、確率の初歩は理解できましたが、ところが後半になればなるほど専門的になり、最後の機械学習は理解できませんでした。しかし、これほど専門的なことを楽しく学んでいる人たちと出会えて、難しく思えても数学を学ぼうと心に火が付きました。
その後、仕事と直接関係のない、超越数、トロピカル幾何学などの最先端の数学研究講演に参加したり、数学カフェのNPO法人化後は講演や「くまもと数学秋祭り」などのイベント運営側として参加しています。運営に携わってみて、数学の枠を超えて教育に強い関心を持っているとても熱心な方々が来場者の中にも多くいるということに気づきました。講師の話を真剣に聞く受講者、秋祭りなどのイベントでは折り紙ワークショップやプレゼンテーション大会などに参加する方々です。その中で、農業などの一次産業にも数学が使われていることを知りました。
数学カフェは2022年から沖縄でもワークショップを実施しており、首都圏以外での開催に力を入れています。地元を離れて東京で学んだことを活かし地元への貢献をするため、私の地元・北海道でも数学カフェを開催できるように活動していきたいです。
NPO法人 数学カフェ
境界なき数学コミュニティ Math Community without Boundary
所属組織、居住地、性自認、性指向、体調、国籍など様々な境界を取り払って誰でも
数学を楽しめる場所を作っています.