この連載ではこれまで、野外の昆虫や植物、石などのお話をしてきました。今回は実際に自分で行ってみたいという方向けに、沖縄の野外で生き物観察をする際に、まず最初に気をつけるべきことについてざっくりまとめてみようと思います。
フィールドの選び方
野外観察に不慣れなうちは、安全のため遊歩道や登山道が整備された場所に行きましょう。深い草むらや森の中は視界も悪く、道に迷ったり思わぬケガや事故に遭ったりする可能性があります。またフィールドに不慣れな方は安全性の問題だけでなく、足場などにあまり気を使わず歩ける場所の方が生き物を見つけやすかったりもします。例を挙げると森の中を散策したいのであれば「県民の森」や「末吉公園」、広い草原などの開けた場所であれば「中城公園」や「平和創造の森公園」がオススメです。これらの場所であっても、整備された道から外れて歩くのはやめましょう(場所によっては禁止されています)。
①危険な場所に近づかない
危険な場所を知っておきましょう。足元の見えない草むらや、雨のあとで水量が増えた川沿い、ガケの近くなどはとても危険です。川の上流部は水が少ないように見えても上流の雨で何mも増水したりします。さらに、雨の後は土や石がぬれて滑りやすくなり、普段はなんともない登山道などでも滑って大ケガをすることがあります。それ以外にも、斜めになった石の上に落ち葉が積もった場所なども大変よく滑ります。事前の下調べをよく行い、フィールドに行く日の数日前からは天気にも注意しましょう。
②持ち物や服装
服装は基本的に長袖長ズボンを選びましょう。肌の露出を少なくすることで、蚊やマダニなどの人を刺してくる生物や、草や枝によるケガなどを防げます。また、暑い時期は帽子などの熱中症対策品も必須です。足元は履き慣れた歩きやすい運動靴などがよいでしょう。ぞうりやクロックスは滑りやすく露出部分も多いためNGです。ちなみに、キュリオス沖縄ではホームセンターや作業着店で売られている耐油長靴を採用しています。地面へのグリップもよく、多少のぬかるみや水たまりも歩くことができ、ハブやヒメハブによる攻撃もある程度防げます(貫通する恐れもあるので過信はしないでください)。ただし運動靴よりも足が疲れやすいので、舗装路が多い場所では運動靴が良いでしょう。
③危険生物や危険な場所
沖縄で一番有名な陸の危険生物はおそらくハブでしょう。しかしこの他にもマダニ、ハチの仲間、ドクガ類の幼虫などがヒトに危害を与えます。ハゼノキやクワズイモなどかぶれたりする恐れのある植物もあります。これらに関しては、どんな生物がいてどんな対策が必要か、そして万が一どんな対処をしなければならないか、事前に調べて知っておく必要がありますので(ここには書ききれません)、事前に図鑑やインターネットなどでよく調べておきましょう。怒ったハチを除けば向こうから追いかけて攻撃してくるような生物はいないので、遭遇しても近づいたり触ったりしないようにしましょう。また、知らない生き物を見かけた場合は触らないようにしましょう。
④法律を調べよう
読者の中には、生き物を捕まえて観察したいという方もいると思います。沖縄には天然記念物や国内希少野生動植物種などに指定され、捕獲や殺生が禁止されている生き物が多くいます。また、国立公園の特別保護区や私有地など生き物を捕ってはいけない場所や、入ってはいけない場所もあります。図鑑で調べたり、県や環境省のホームページなどを見たりして事前に調べましょう。管轄が国(環境省、文化庁)だったり、県だったり市町村だったりして情報が一箇所にまとまっていなくてなかなか大変ですが、面倒がらずに調べる必要があります。
⑤当たり前の危険にも注意
これはフィールドに出る場合に限らずですが、外で活動する場合に熱中症や車に注意する必要があります。ここでは詳しく書きませんが、フィールドでも当然注意が必要です。
⑥夜に観察に行く場合
生き物の中には昼に活動する昼行性の種だけでなく、夜に活動する夜行性の種もいます。そういった生き物を観察する場合は夜に出かけなければなりませんが、夜は視界が悪く、懐中電灯などの道具も必要になってきます(スマホのライトは照射範囲が狭く光量も少ないため大変危険です)。事故やケガのリスクも高いので、昼間の入念な下見や経験者に連れて行ってもらうなど、十分に安全を確保するようにしましょう。
⑦緊急の連絡先を確認しておく
緊急の場合の家族や知人の連絡先、救急をやっている最寄りの病院などの情報を確認し、できればスマフォが電池切れして他の人に連絡してもらう場合にもそなえて印刷して持っておきましょう。またいつどこに行って何時頃戻る予定か、家族や知人にあらかじめ伝えておきましょう。
終わりに
ここまでざっくりまとめましたが、それでも不安が残る方は生き物観察に特化した「貸し切り」ツアーを行っている弊社(キュリオス沖縄)のツアーをへの参加もご検討ください。一度参加すれば自然観察について気をつけるべきことも学べます(重点的に学びたい場合は、申込みの段階で要望としてお書きください)。さらに、現在沖縄本島在住者向けの格安ツアーも行っております。詳しくはキュリオス沖縄のホームページをご確認ください。



仲間 信道なかま のぶゆき
沖縄生まれ沖縄育ち。好きな生き物は多足類(ムカデ、ヤスデ、ゲジなど)、昆虫、爬虫類など広く。専門はタマヤスデの分類。多趣味で、バイクいじり、古物収集、レコード鑑賞などが好き。琉球大学大学院農学研究科修了。修士(農学)
一般社団法人 キュリオス沖縄
沖縄県那覇市前島2-5-17 福琉産業ビル前島6階 TEL 080-9851-883


