トカゲモドキという生き物を知っていますか?ペットショップに行くと、ヒョウモントカゲモドキ(レオパードゲッコー)という種がよく売られているので、もしかしたら見たことがある方もいるかもしれません。トカゲモドキは地表で活動し、主に小型の昆虫類を捕食して暮らしている爬虫類で、一見するとトカゲのようですが分類学的にはトカゲよりもヤモリに近い生き物です。ただし、一般的なヤモリのような指下板(しかばん)を持っておらず、壁を自由自在に登ったりすることはできません。そんなトカゲモドキですが、実は沖縄島にも生息しているのです。
沖縄島には名護市以南と本部半島に生息するクロイワトカゲモドキGoniurosauruskuroiwae と、大宜味村の塩屋湾以北に生息するヤンバルトカゲモドキGoniurosaurusnebulozonatus の2種が生息しています。クロイワトカゲモドキは全長15ー18cmほどで、頭と胴の背面が黒っぽく、側面から腹面にかけて白っぽい色をしています。また、背中の中心には黄色〜オレンジ色の縦じま模様が一本入ることが多いです。一方、ヤンバルトカゲモドキは基本的な大きさや体色はクロイワトカゲモドキとほとんど同じですが、背中の縦じま模様はぼやけているか、ほとんどありません。一方で、3〜4本の横じま模様が入ることがあります。実は、ヤンバルトカゲモドキも最近まではクロイワトカゲモドキとして扱われていたのですが、遺伝子や体の模様、形態を調べなおしたところ、塩屋湾より北に生息する集団はそれ以外の集団と区別できることが明らかになり、2024年の2月にヤンバルトカゲモドキとして新種記載されました。

クロイワトカゲモドキ。背中の中心にある縦じま模様が目立つ

ヤンバルトカゲモドキ。背中の縦じま模様はぼやける。
このように外見上区別がつかず、同種として扱われていた種のことを隠蔽種(いんぺいしゅ)と言います。
生息している環境は2種とも共通しており、昼間は森林内やその周辺の岩の隙間などに隠れていて、夜になると地表へ出てきて活動します。また、石灰岩洞窟が発達する地域では、洞窟内でもよく観察されています。沖縄島北部では夜間に林道上に出てくることも多く、比較的観察しやすい生き物ですが、中・南部地域では開発やノネコ等の外来種の影響で生息域が狭く、限られた場所でしか観察することができません。
一方で、那覇市内でも生息している場所があるなど、思っているよりは身近な生き物でもあります。日本では全部で7種のトカゲモドキの仲間が分布していますが、国内の全てのトカゲモドキ類は文化財保護法(いわゆる天然記念物)及び種の保存法により保護されているため、捕獲や売買等の行為は禁止されています。もし見かけても、触ったりせずにそっと観察だけしてくださいね。

横じま模様が目立つヤンバルトカゲモドキ。ここまではっきりでるのは珍しい

クロイワトカゲモドキの幼体。幼体は頭部や胴部のまだら模様がほぼ無い。

仲間 信道なかま のぶゆき
沖縄生まれ沖縄育ち。好きな生き物は多足類(ムカデ、ヤスデ、ゲジなど)、昆虫、爬虫類など広く。専門はタマヤスデの分類。多趣味で、バイクいじり、古物収集、レコード鑑賞などが好き。琉球大学大学院農学研究科修了。修士(農学)
一般社団法人 キュリオス沖縄
沖縄県那覇市前島2-5-17 福琉産業ビル前島6階 TEL 080-9851-883