NPO法人数学カフェの加藤本子です。私は普段、琉球大学教育学部の教員として、数学の研究を行っています。皆さんは研究者やその生活についてどのようなイメージを持っていますか。ここでは自分がどのようにして研究者になったのか、どのような生活を送っているかについて紹介したいと思います。
私は沖縄出身で、高校までは沖縄で過ごしました。大学は県外の大学を受験して一人暮らしを始めました。大学に入学した時点では、物理か数学を専攻したいと思っていましたが、大学数学のわけのわからなさに挫折しつつも魅力を感じたため、数学系に進みました(「数字であそぼ。」という漫画の主人公の状況に近いので、ぜひ読んでみてください)。大学の学部の間は教科書での勉強が中心だったので、数学の研究を経験してみたいと思って大学院を受験しました。
大学院に入ると本格的に研究がスタートしました。研究生活で何をしているのかをざっくり紹介します。私の研究分野は幾何学という分野で、図形に関する問題を研究しています。具体的には、例えば、きれいな対称性を持つ(無限次元の)建物を(無限次元の)積み木で作れるか、というような問題を考えています。問題を考えるといっても、自分の頭の中だけでずっと考えているわけではなく、情報収集やコミュニケーションによって進む部分も大きいです。例えば、論文やプレプリント(出版される前の論文)をチェックすると、分野の近い研究者たちが最近どのような研究をしているのかについて情報収集することができます。arxivというプレプリントサーバー(https://arxiv.org)では、毎日新着のプレプリント情報がチェックできるので、新聞感覚で見ています。他の研究者と話すため、海外まで行くことも多いです。一人で海外の大学まで行くのはちょっとした冒険で、私はいまだに慣れません。沖縄の人は驚くとマブイを落とすそうですが、私は海外出張中、しばしば「マブイを落とす」経験をしました。世界中にばらまかれた私のマブイはどうなってしまうのでしょうか。
大学院には修士課程と、その後の博士課程があります。修士課程を修了して就職する人、博士課程に行く人、就職して仕事をしつつ博士課程にも在籍して博士号取得を目指す人など様々です。私の場合は博士課程に進み、卒業後に大学の教員公募に応募して職を探し、現在に至ります。
最後に、研究者としての現在の生活について書きます。現在の私の課題は、研究と育児との両立です。二人の子どもが生まれて育児への時間配分が増え、研究時間を守る手段を探して手探りの毎日です。仕事がうまくこなせず凹むことも多い中で、琉大教育学部の学生や、地元の中高生の皆さんと数学の話ができることは、大きな励みになっています。数学を面白いと思う新鮮な気持ちや、数学教育への意欲を思い出させてもらえるからです。皆さんと一緒に、今後も頑張っていけたらと思っています。
NPO法人 数学カフェ
境界なき数学コミュニティ Math Community without Boundary
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