2020年教育改革に向け、塾などの民間教育も大きく変わり始めています。今こそ選ぶべき塾について、労働市場のグローバル化を視野に入れた日本の民間教育をリードする4名が語ります。
株式会社スタディラボ 地福武史代表(写真右から2番目)
学習塾の運営、学習教材の販売、塾関連の広告デザインなと携わる事業は多岐に渡る。今力を入れているのはオレコというオンライン英会話。日本の子供たちとフィリピン在住の英語講師とを直接繋げてマンツーマンで英語指導。教材は今後の受験にリンクするよう学習指導要領に対応。公益社団法人学習塾協会の常任理事。
キラメックス株式会社 樋口隆広代表(写真右から1番目)
大人向けのオンラインプログラミングスクール「TechAcademy」を運営。昨年からは子供向けプログラミングコンテンツをスタート。全国にプログラミングを学べる場所を作るため、塾と提携。ゴールは子供向けプログラミングではなく、エンジニアや起業など直接職業に直結するもの。
株式会社ユナイトプロジェクト 古岡秀士代表(写真右から4番目)
2017年12月にリリースした学習塾の比較・口コミサイト「塾シル」を運営。サイトを見ただけで、複数の塾を比較し絞り込んだうえで資料請求ができるだけの情報量と新鮮な口コミ情報を掲載するため、資料請求数に対する入塾率の高さがポイント。
株式会社SRJ 堀川直人代表(写真右から3番目)
現代の高度情報化社会で活きる力となる「速読」を軸に、英語学習プログラムやキャリア教育など時代の変化にも対応した次世代教育のグローカル化を担う。
ジュクタン「2020年に向けて、県内の塾でもプログラミングや英語の4技能を意識した様々な取り組みが始まっていますが、どういうポイントで塾や教材を選んだらよいでしょうか?」
・今後の英語教育のポイントはとにかく伝わること
地福「まず前提として、現在日本が受けている少子化の波は打ち消されることはないので、一人一人の生産能力を上げることが官僚ベースで統一した考え方となっています。そのため文科省だけでなく、財務省や厚生労働省など複数の機関が一緒になって高大接続の大改革を支えています。中韓では10年ほど前から英語教育の改革を行い学校教育の中で英語が話せるようになる人が増えましたが、日本ではその間、受験英語というジャンルでしか確立しない《話せない》英語教育を受けてきました。日本の国力が伸びている時はそれでも良しとされていましたが、これからは国内だけを戦いのフィールドにしていたら勝てません。子ども達が英語を使ってグローバルに活躍できる第一歩として、外国人と一対一で向かい合って恐れず話せるようになるため実践の機会が必要ですが、日本の子どもは小中高で1200万人、塾に通っているのはその約半数。それに対応した外国人講師を国内に呼び込むのは不可能です。しかし4年前に我々が始めた、国内にいながら直接外国人に繋がる子ども向けのオンライン英会話サービスでは、比較的安価で外国人講師とのマンツーマンレッスンが実現しました。スタート時は文字ベースの学習教材だったため、対象は小学生以上でしたが、今はビジュアルベースで学べる教材にも取り組んでおりまして、未就学児にも対応可能になります。外国人と直接話す機会は、英語に関心を持ち、好きになるきっかけとなり得ますが、語彙力を飛躍的に伸ばすには正直不足です。逆に速読は語彙力を伸ばすのに効果的ですが、せっかく覚えた単語を実際の会話で試す場がありません。そのためオンライン英会話や速読などいくつかの学習教材を組み合わせて、4技能をバランスよく磨くことを推奨しています。これまでの日本の英語教育は間違えを探していく指導方法でしたが、今後は伝わることに観点をおくことが重要になってきます。塾や教材選びのポイントですが、子ども任せ、塾任せにしないことが大切です。塾や教材選びのポイントは、子ども任せ、塾任せにしないこと。保護者の方々がしっかりお子さんを見て、子どもがやっていて一番キラキラしているものを選ぶようにしてください。中国や韓国など先行して国際解放した国々の動向をみると、日本も今まで考えられなかったような新しい変化が生まれてくると思うので、広くアンテナを張ってより品質の高いものを選ぶようにしたいただければと思います」
・学校でやるからではなくプログラミングを将来どう活用できるか
樋口「現在市場にあるプログラミング関連のプロダクトは、小学校での必修化に合わせた教材を作り、塾に導入しているものが多いのですが、学校で良い成績を上げるため先まわりしてやるというところで止まっていて、その教材で得た知識や技術がどのようなものなのか、実際に社会に出た時に活用できるのかまでは明確になっていない状態で商品化されているところが多いように見えます。先日読んだ記事に、アメリカの職業の年収と満足度のランキングが載っていましたが、トップ10に4つくらいテクノロジー系の職業が入っていました。アメリカだけでなく、中国や韓国でもプログラミング教育が進んでいる中で、グローバルに戦っていくのであれば必要な能力は自ずとわかってくるでしょう。もちろん入り口は、ロボットを動かすのが楽しいとかそういうキラキラしたもので良いと思ます。大切なのは、そこから先にどういうステップがあるか。なぜ今プログラミングをやるべきなのか、という問いに答えられる塾であることは塾選びのポイントになると思います」
ジュクタン「2020年から科目化されるからというだけでなく、その先を見据えている塾ということですね」
樋口「科目化に対応することは、それはそれで大事ですけどね。それだけでは駄目なんです」
ジュクタン「集団塾、予備校、個別など塾は今種類も多様化していることに加えて、オンラインなど塾の背景が変わってきていますが、今実際に選ばれているのはどのような塾なのでしょうか?」
吉岡:「これまでは保護者の方が塾を選ぶにあたって、子供が将来苦労しないようにいい大学、いい高校、いい小学校に行って欲しいというところがベースになっていました。しかし、今回の入試改革で子供にとって何が子供の役に立つのか、何を持って子供が評価されるのかがふわっとしたものになってしまった。今、塾関連の情報の非対称性が問題になっていて、保護者の方々が欲しい情報は「その塾がどのようなことをしているのか?」「料金は?」「どういう先生がいるのか?」「口コミは?」という順番でそして最後に「塾の理念や学長の想い」がきています。でも多くの塾のホームページは理念から始まっていて、流動的な先生や料金の情報はあまり載せられないところが多く見受けられます。塾シルに掲載している塾で、資料請求や体験授業のアクションが起きるのは、短期的な視点でなく、長期的なスパンで将来を見据えた学習を提供し、それを明確に示してているところです。プログラミングや英会話はまさに今のホットワード。目に付きやすいので、何となく始めると結果的に辞めてしまう。この教育改革で何が求められていて、何が必要なのかを改めて保護者の方に伝えていけたらと思います」
堀川「私はシンプルに読む力について言いたいです。昨年話題になった『AI Vs.教科書が読めない子どもたち』でも書かれていますが、AIの研究をしていくと読解力など人には勝てない力があることが分かってきています。それで読解力が今の子供達にどのくらい備わっているかと調べたら驚愕の結果が。AIやスマホに慣れた子どもたちの読解力の低下を止めないと英語教育、プログラミング以前の問題になります。自分が保護者に伝えたいのはまずはやっぱり基礎学力、特に読解力を塾選びの基準に置くべきではないかと思います。読み解く力を身につけるには短時間で多くの情報を処理する速読はとても有益です」
ジュクタン「将来についても、これからの舞台は日本国内ではなくなる。厳しい世の中になりそうですね」
地福「既に保護者の方も職場でグローバル化に直面なさっていると思います。現在、東大・京大の就職人気ランキングで全10位中、日本企業は3社だけです。しかも、みんな独立志向が強いので、海外の企業で必要なものを学び切って3〜4年で辞めて転職か起業する。日本の子供達の就職状況は我々の時代とは違う。トレンドを知ることはとても重要です」
堀川「実際の保護者の塾選びのポイントは何かというと、沖縄は特に家から近いとか料金が安いという。安易に塾を選んでいるんです。もう一度塾選びについて、もっと真剣に親はどういう子どもにしたいのか、子ども自身は将来どうなりたいのかを一緒に考えて選ぶ必要があります。社会にどういう形で子供を送り出したいかを逆算した上で塾を選んで欲しい。高校はほぼ公立だと思うので大きな差はありませんが、塾などの民間教育の選択に関しては親がもっとしっかりこの三人が話された基準とかも考慮にいれてしっかりと考え直さないといけないと思います」