沖縄の伝統的な焼き物といえば、皆さん御存知の壺屋焼ですね。1682年に尚貞王が県内の3つの窯を統合し、現在の壺屋にあたる場所に新たな窯場を設置したのが始まりとされています。壺屋焼は陶器に分類され、お皿だけでなく、ガーミ(瓶)や酒器など様々な製品が作られています。また、島人の日用品としてだけでなく、かつては交易品としても活躍し、現在でもとても人気があります。そんな壺屋焼を圧倒し、ピンチに陥れた食器たちが存在したのを知っていますか?
その名もスンカンマカイ。白地に呉須(コバルト染料)を用いた青色の染付文様が施され、縁が反っているのが特徴的なお茶碗です。スンカンマカイという名前は、沖縄の方言で「大きめの茶碗」を意味し、主にご飯や汁物をよそったりしたようです。

もっとも流通した文様の「窓絵花文碗」。遺跡などから出土するスンカンマカイの6割を占めるようです。

使用された時期は大正〜昭和中期頃で、沖縄本島を中心に一般家庭で使われました。このスンカンマカイ、実は沖縄の焼き物ではなく、なんと愛媛県産の砥部焼と呼ばれる磁器なのです。第一次世界大戦後、日本では陶磁器を海外に大量に輸出しており、どうも一緒に沖縄にも輸出していたようなのです。スンカンマカイの人気は凄まじかったようで、壺屋焼が売れなくなるほど沖縄の家庭で大ヒットしました。あまりにも普及しすぎて沖縄の焼き物だと勘違いされたり、県内でコピー品が作られることもあったようです。
そんなスンカンマカイを集めるのが筆者の趣味だったりします。施される文様の種類が多く、花、鶴、松竹梅など20種類以上あることが分かっており、それが蒐集癖に拍車をかけています。

うちでは現役の食器としても活躍しており、実際に使ってみると軽くて手に馴染み、反った縁のおかげで汁物なども飲みやすいです。
スンカンマカイと筆者がよく出会う場所は、実は海や山だったりします。昔の人々は割れてしまった食器などを、海や山に捨てる風習があり、生き物を探している時や、ビーチコーミングの際にその破片をかなり見かけます。
島内のどこにでもあり、古墓や遺跡からも多く出土するようなので、相当普及したようです。知らないとただの割れた茶碗ですが、こんな風にかつての人々の暮らしの様子を伺う手がかりになったりします。皆さんも外で見かけたら、是非文様を観察して比べたりしてみてください。ちなみに個人的な推し文様は窓絵鶴文碗です。

様々な文様のスンカンマカイたち。片っ端から集めたくなっちゃいます。

スンカンマカイでご飯を食べてみる。盛り付け時の既視感の正体は博物館の展示でした(写真はレトロ風に加工しています)。

林内に投棄されたスンカンマカイたち。県内の様々な場所で見かけます。

推しの窓絵鶴文碗。正面の鶴がとてもかわいいです。

仲間 信道なかま のぶゆき
沖縄生まれ沖縄育ち。好きな生き物は多足類(ムカデ、ヤスデ、ゲジなど)、昆虫、爬虫類など広く。専門はタマヤスデの分類。多趣味で、バイクいじり、古物収集、レコード鑑賞などが好き。琉球大学大学院農学研究科修了。修士(農学)

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