國吉 美穂 先生   興南学園 教諭(国語)    比嘉 智ノ介  興南中学校1年生     赤嶺 美海愛  興南中学校1年生

2024年学校説明会 
10月26日(土) 興南高等学校 学校説明会・入試問題解説会はコチラ

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「未知を既知にする。」
興南中学校の総合学習とは

総合学習の目的は、生徒が学びを通して、学び方や問題解決能力を身につけ、自身の未来を切り拓く力を育成すること。そのため、まず、生徒たちに自分たちの住んでいる地域について、理解を深めることから始めるようなカリキュラムにしているとのこと。
「意外に沖縄のことを知らないんですね。食・芸術・歴史などについて無知なんです。ですので、未知のものを既知にする、机上の学習だけでなく、体験する。そういう総合学習でありたいと考えています。」そう話すのは、興南中学校一学年主任の國吉美穂先生。生徒たちが地域のことを知り、考える。そこから、学校の理念である、南を興す、つまり、地域を興す人材を育てることを目指しています。今日は実際に授業を受けた一年一組の二人の生徒と共にお話を伺いました。

「意外と沖縄のことを知らないんです」(國吉)

國吉 一年生は年間を通じて、「沖縄」をテーマとしています。「文化・自然・平和学習など」を調べ学習だけでなく実際、食べる・見る・聞く・触れる等直接的な体験を大事にしています。一学期のスタートは、生徒たちが親しみやすいテーマとして、「沖縄のお菓子」を取り上げました。入学後はまだ、学校や、友人関係にも慣れていない時期でもあるので、みんなで味や香りを共有できるテーマをピックアップし、知ることの楽しさを体感できるように工夫しました。
例えば、ぶくぶく茶について、調べ学習を行った後、実際にお点前を見学し、お茶を頂く。本校の卒業生に、ぶくぶく茶を伝える活動をしている方がいましたので、実際学校に来ていただいて、お点前を披露して頂きました。動画などではなく、実際目の前で見ることは、関心をもつことへもつながったと実感しています。また、そこで、お茶菓子として「冬瓜漬け」を準備したのですが、ほとんどの生徒が、ぶくぶく茶も冬瓜漬けも初めて!「泡が鼻についた」「さんぴん茶の香りがする」「冬瓜漬け甘い」など、実際経験しないとこういう感想は出ないので、狙い通りなわけです(笑)。お点前の時に頂くお菓子を載せる懐紙を、鶴の形に折ることもこの時教えてもらい、自分で折ったお懐紙の上に、冬瓜漬けを載せていただきました。さらに、琉球王国時代に接待や祭事に用いられていた琉球菓子と庶民に親しまれてきた菓子を調べたりしました。「千寿糕(せんじゅこう)」や「闘鶏餃(たうちーちゃお)」そして「のまんじゅう」など、写真を並べて調べさせたのですが、食べたことはもちろん、見たことない生徒が多く、調べるのにも四苦八苦していましたね。「のまんじゅう」くらいは食べたことがあるかな、と思っていたのですが、意外と少なくて驚きました。今はむしろ、観光客の方が食べる機会が多くなっているのではないでしょうか。

赤嶺 琉球菓子は、名前は聞いたことがあるものもあったけど、ほとんど食べたことがないものばかりで、調べるのも難しかったです。

國吉 調べると一言で言っても、いろいろな方法がありますよね。検索ワード一つをとってみても、「沖縄 お菓子」ではどうか、「琉球王朝 お菓子」ではどうか、など、それによって、出てくる情報が違うので、グループワークの中で、知恵を出し合って調べていました。早く調べたグループに「のまんじゅう」を用意していたのでグループそれぞれ燃えていましたね。(笑)ここでのポイントは、ただ早い、遅いではなく、なぜ早かったか、なぜ遅かったかを振り返ること。それに気づかないグループには、ヒントを出します。調べる力も大切です。これは、自学習にもつながります。また、他教科においても活用できる力です。教科で学んだことを総合学習に、総合学習で得たスキルを教科の学習に、相互に活用することで相乗効果が得られるわけです。

「友人と一緒に取り組むといろんな気づきがあった」(比嘉)

比嘉 お菓子の名前を調べたとき、一人でやるよりも、調べ方の工夫とかで、友人の視点に助けられることがありました。グループワークの中で、新たな視点に気づいたり、協力することで効率も上がったりしました。

國吉 お菓子以外にも、沖縄の自然を学ぶ回、そして、平和学習の時間というように進んでいくわけですが、大切なことは、今とつなげてあげることなんですね。自分の地域に、こんなに素晴らしい文化があるんだ、こんなに豊かな自然があるんだこんな悲惨な出来事があったんだ、ということを知るわけですが、過去と現在を比較したり、平和学習であれば、今実際に起きていることにも目を向けたりしながら、「自分事」として考えていく。「自分事」にしていくプロセスの中で様々な気づきがある。それが総合学習の醍醐味でもあると思っています。

「物事には背景がある。背景を知らないと何を変えていいかわからない」(赤嶺・比嘉)

赤嶺 戦争があったこと、やんばるの森が世界自然遺産に登録されたことは知っていたけど、いままで背景とか歴史に目を向ける機会があまりなかったから、驚きもありました。でも知らなかったら考えることもできないから、知れたことはよかった。

比嘉 確かに、背景を知ることで、逆にこのままでいいのかな、と不安になることもあった。いろんな問題が沖縄にあるけど、その原因みたいなものが、背景を知らないとわからなかったかもしれない。

「いつか県外・海外で沖縄のことを発信できるようになってほしい」

國吉 自分の地域にこういう文化や歴史、自然があるということを知ることは、故郷に対する愛着を生み出すことになると思っています。彼らがいつか、県外・海外に出た時に、「沖縄のことを教えて」と言われて、何も言えないのは悲しいし淋しい。実際卒業していった生徒たちからも、総合学習で学んでいたことが、大学や留学で役立っていると嬉しい報告を受けることも多いです。

総合学習の醍醐味

國吉 総合学習は何も、生徒たちだけに良いものではありません。教員も視野が広がりますね。これは、とても大きな副産物といえるかもしれません。普段指導している教科の枠を超えていくわけですから。ICTの活用やプレゼンのスキル、検索の手段など、だからこそ、楽しんで生徒たちと一緒に学び合うことができる。何かを調べるときに、生徒たちはICT機器をすぐに使います。大人はどうでしょうか。もちろんICTも使いますが、辞書や新聞など、アナログも活用すると思うんですね。そうすると調べた結果や他の付随する情報などに、違いが出ます。その違いを共有することで、学びに広がりが出ます。ですので、ICT機器もアナログも、選択して使えるようになってほしいと思っています。そういう経験値を積み上げていくことが生徒たちの力になると信じて、これからも楽しみながら、総合学習に取り組んでいきたいと思っています。
2学期は地元沖縄のことを人に伝えられる様、更に踏み込んでいく興南中学の総合学習。最終的には島くぅとぅばや三線、琉球舞踊などを生徒が実際に習得して劇として人前で発表出来るようになることが目標です。まだ半年以上先のことですが、一般公開も検討中。その際にはぜひ生徒の発表を見に来てください。

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