「仕方ないを、仕方あるに変える」

我喜屋 優 理事長

「答えのない世の中、興南で生きる方向性を探して」

木村 達哉 先生(興南学園アドバイザー)

コロナ禍における 今の教育の課題

我喜屋「正直コロナがここまで影響あるとは思いませんでしたが、4〜5年前から、5GやIT教育という話を聞いていて、WiFiなどの環境づくりをしなければいけないと頭の片隅にはありました。それで昨年からこのような事態になって、いち早く環境づくりをしたので、沖縄の中では興南が先駆けてオンライン授業を導入しました。教頭を中心にネットワーク委員会を作り、先生方が知識豊かに取り組んでくれて、全生徒にGメールのアドレスを割り振り、グーグルフォームを全職員で活用できるようにしました。これが非常に大きかったです。本当に先生方には感謝しています。オンラインで行えない生徒には、オンデマンド(録画配信)授業も導入し、学びの公平性にも気を配りました。課題はやればやるほど出てきますが、それを先生方で共有しながらミーティングを重ねて対応を模索している状況です」

木村「去年僕は、灘高校最後の年で高校3年生の学年主任でしたが、コロナによる休校期間にうちの学年めっちゃ成績が上がったんですよ。僕は高校1年からずっと成績の推移を見てきた彼らをうまく卒業させなきゃ辞めるに辞められへんなとずっと思っていたんですが、これはうまいこと実績出せるんちゃうかなって。当時の首相の安倍さんが『全部休校です』って言うから世の中的には大変なことになったぜみたいな感じでしたが、正直家にいても勉強するという意識付けが出来ていれば大丈夫なんです。去年卒業した生徒たちはその意識付けに成功したなと感じています。生徒たちへのアプローチがうまいこといったなら教員なんておらんでも自分の家でちゃんと勉強してこうして成績を上げるんだねと。だからコロナ禍においても、WiFi環境であるとか、タブレットを配布するとか、最低限のハード面は必要ですけど、ソフト面というかメンタル面でのアプローチが一番大事なんです」

我喜屋「私が北海道で野球部の指導した時のことです。それまでは、『北海道は冬が長いから練習が出来ない。雪が積もっているから出来ない』と指導者は言い訳をしていました。だから、私は『スキー場やスケート場の方がもっと寒い。なんで雪かきして、ちょっと厚着して練習しないの?』と言いました。冬の間、皆一緒には組織的な練習は出来ないかもしれない。でも個々のポジションの動きは体育館や、雪かきした範囲で充分に出来る。問題はやる気があるかないかなのです。すると北海道の常識がガラッと変わって、冬でも知恵を使って野球ができるようになったので、対戦相手として当たると怖い存在になりました。多角的な視点で物事を見て、仕方ないを仕方あるにする。これは野球だけでなく、勉強にも、会社経営にも全て共通しています」

木村「オンライン授業って、先生も生徒もすごく疲れるんです。先生はずっと生徒のログイン状況を確認したりして仕事が増えますし、生徒はいきなりこんな小さな画面に向かって長時間勉強しろと言われても疲れる。でも本来、ログインなんてしてもしなくて良いんです。自分は勉強していますと言えるのなら。先生が普段からしっかりとエネルギーを生徒に与えているのであれば、野球をやりたい生徒は野球をやるし、英語をやりたい生徒は英語をやる。音楽をやりたい生徒は音楽をやる。僕が初めて興南に来た時、野球部は7時まで全体練習をして、そこからはそれぞれが自主練していました。だから興南は強い。一人ひとりの弱点は違う訳で、一人がバントが苦手だからって全員でバントをやる必要はない。盗塁をしたければ、自分の時間でやるしかない。それぞれがどういう勉強すれば自分のレベルが上がるのかを指導者は普段から伝えていれば、急に休校になっても生徒のレベルは上がり続けるんです」

子どもたちが家でも モチベーションを 保つには

木村「そもそもモチベーションというのは、生きる力ですからね。ポケットに入っているスマートフォンを出してくださいと言われたらすぐに出せますけど、じゃあやる気を出してくださいと言われても、そもそもやる気のない人にやる気は出せないじゃないですか(笑)。休校で家にいる時間は、自分はどうやって生きていこうか考えて、内面を高める良いチャンスだと思います。自分の両親を見てどういう大人になろうと考えるとか、それこそネットで調べて自分がどんな人間だったら格好いいなとか考えられたら、そこに近づくためにやる気は出てくる。それを内発的動機づけといいます。お金が欲しいとか、知恵が欲しいというのは外発的動機づけ。どちらが動機になるかは人それぞれです」

我喜屋「僕らもよく逆境を乗り越えた向こうには幸せが待っていると生徒に伝えています。そういう意味で欲は大事。何が何でも勝ちたいと思うチームと、勝敗はどっちでもいいというチームでは勝ちたいという想いの強いチームの方がモチベーションが高いし、実際に勝ちます。メンバー内で言えば、レギュラーに近い子はモチベーションが高い。しかしメンバー発表で外れたら、次の日からモチベーションがぐっと下がる子もいる。そんな子には、今はしゃがんでもいいからまたジャンプしなさいと伝えています」

これからの生徒に身に付けて欲しい教養と学力

我喜屋:最近教養という言葉が流行っています。人によっては体付きの滋養、野球でいえばウォーミングアップ、困ったときの人助けいろんな表現方法があります。共通して一番大事なのは基本中の基本だということ。教養なくては一位をとっても崩れていく自分の大きな人生設計の前に教養が必要です。教養を身に付けるためには先人たちの成功体験、失敗体験など、本屋に行けば身に付く情報があります。学校の中では歴史を教えています。近代・現代歴史、戦後の事件出来事などを学んで自分たちは何をしていかなければいけないか?授業だけでなく子供たちに教えていかなければなりません。

木村:生徒だけでなく大人もそうなんですが我々昭和の人間の大学受験は知識を問われていましたが今の大学入試はあまり重要視されていません。知識は検索できる時代頭の中に持っておく必要性がないのです。それを使って幸せになるためにはどういうことをしないといけないのか?人によって違います。考え方にその人の持ってる教養が影響を及ぼす。知識だけでなく普段から考えていることが発言に出てきます。これからの生徒に身に付けて欲しいのは覚えるだけの学習は意味はない知識は大事ですがそれをもとに考える習慣を身につけていることが大事でそれがその人の教養です。そのためにはいろんな人に会って話をしたり本や新聞を読んだりすること、そして親・大人がその環境を作ってあげることが大切です。

これからの時代を見据えて、興南学園が目指す教育とは?

我喜屋「社会、世の中は答えがありません。答えがない社会だからこそ情報をしっかりと掴み分析して解決する能力が大事です。それにチャレンジできる人を作っていくことが興南の進べき道。時代に対応できる、生き抜くことができる人づくりこそ興南に必要とされている。そのためには準備と後始末、1日も一生の一部、大事に作る1日1日を作ることができる生徒を育てる学校を目指します。

木村「興南のいいところは多様なところです。金メダルを取る人もいれば、大学に行く人もいる。いろんな人がいます。いわゆる進学校は多様というより画一的かもしれません。全員が全員大学し安心と言えば安心ですが、学校全体で言うと活気がよわいと思います。興南は多様性があるので教員や友達を含めて自分の人生のモデルが見つかりやすい学校。入学を考える生徒たちは自分はちゃんと学びたいのか?生きる気力は?自分のモデルとなる大人はいるのか?がスタートです。興南にはいろんなモデルがいるので意識を持って自分の生きる方向性を探しに興南に来てくれるといいのではないかと思います」

学校法人興南学園 興南中学校・興南高等学校
〒902-0061 沖縄県那覇市古島1-7-1 TEL:098-884-329
2021 年10 月24 日(日)興南高等学校 入試・学校説明会(オンライン)