「勉強って 面白いんやで」by 「ユメタン」著者 キムタツ先生
卒業生の約三分の一が東大合格という驚異の進学実績を誇る灘中学校・高等学校の英語科教諭である木村達哉先生(通称キムタツ先生)。ユメタンをはじめとする参考書の著作や、全国の中学・高校での講演会など、学校内に留まらず幅広く活動されています。沖縄では「おきなわ学びのネットワーク」の理事を務め、昭和薬科や興南高校をはじめ県内多くの高校で講演会や出張授業を通して学ぶことの面白さを沖縄の生徒たちに伝えてくれるキムタツ先生にジュンク堂書店にてお話を伺いました。
・部活に対する 沖縄特有の考え方
「沖縄の生徒たちの学力は県全体としてはまだまだですが、高校生対象の無料セミナーを開催すると毎回100人以上は来てくれるので、可能性は大いに感じています。ただ、沖縄には特有の考え方があって、3年生で引退するまでは部活だけを精一杯頑張って、引退後に受験勉強を始める傾向があります。実はこれ、沖縄以外にはあまりない価値観です。 部活は身体を形成するためにも、社会性を培うためにもとても大切。でもスポーツでこれから生きていこうということでなく、大人になってそれなりに生きていくためには勉強も同時にやる必要があります。なのに学校の先生も含めて、受験勉強というのは大学に入るための特殊で苦しいものだと思い込んでいるのが問題です。本来勉強は自分を鍛えるためのツール。どんなことでも出来るようになれば楽しいもの。勉強って面白いんやでと、子ども達に伝えていきたいです」
・ガリ勉では東大に 入れない
「灘では、基本段階で覚えなければいけないことはしっかりとやりますが、問題は(将来社会に出て)何の試合に出るのか。物理学の道に進んで研究をするのか、僕みたいに教育の道に進むのか、官僚となって日本を変えるのか、地方自治体に行って地方創生を担うのか、灘では中学1年生になった時点で自分の方向性を考えながら、これから学ぶべきこと、そこそこで良いことを取捨選択します。全てを完璧にする必要はありません。灘のような進学校はガリ勉的なイメージを持たれがちですが、ガリ勉では東大には入れません。色々な知識と経験を積み重ねて行く中、自分に足りないものを実感することで湧いてくるファイティング・スピリットが欠かせません。沖縄の子たちは、身体能力が高く、可能性を秘めています。だからもっと早い時期から将来についてしっかり考えてほしいです」
・書店は地域の 文化レベルを表す
「東大に行くことは目標ではなく、ひとつのプロセス。上位校ほど良い大学に入ることが目標となっていて、良い大学に入れたら良いところに就職できて幸せな人生を送れるという昭和的な価値観を持った子が多く見られますが、大学そのものはゴールになりません。大切なのはその先。でも中高生では、自分の身の回りにいる大人といえば親や親戚、教員くらいでしょう。そのような環境で学校と自宅の往復しかしていなければ、人生の選択肢を見つけることなんて出来ません。そんな時は書店をフラフラ歩いてみるんです。そこにある何千冊もの本には様々な人生が描かれています。書店は地域の文化レベルを表します。ジュンク堂ほどの大型書店がある那覇の文化レベルは高い。名護にも作るべきです」
・人生はゲーム みたいなもの。
「今、勉強や仕事に対する価値観は変わってきています。勉強しろ勉強しろと言われて育った子はなかなかファイティング・スピリットを持てませんが、たくさん経験を積んで自分がいかにアホであることを認識したら、これからどの様に学び人生を歩んでいくべきか見えてくるかもしれません。家が医者だから医者を目指すという子はある意味不幸。医学部はすべての学部の中で一番職業養成系で潰しが利かないから他にやりたいことが見つかっても医者以外になりようがないのです。もしやりたい仕事がなければ自分で作ればいい。そのためにいつまでにどのようなスキルが必要かを自分で調べて一つ一つ身につけて行くんです。人生はゲームみたいなもの。早く気付け!」
木村 達哉 /Tatsuya Kimura
・灘中学校・高等学校 英語科教諭
・関西学院大学フェロー
・興南学園 教育アドバイザー
・一般社団法人 ふくしま学びのネットワーク進学アドバイザー
・おきなわ学びのネットワーク理事
<公式サイト> http://www.kimu-tatsu.com/