連載:森 弘達先生と読み解く 教育改革最前線⑤
[沖縄本土復帰50周年特集・拡大版]
沖縄の子育て・教育政策についての提言~おきなわ子育て・教育王国の建国宣言~
今年、沖縄は本土復帰50年を迎えます。この50年でインフラ整備が進み、県内総生産も復帰時の約10倍となり、沖縄県全体でみれば成長を続けています。一方、収入は国内最低水準が続き、経済格差の拡大、貧困が大きな問題となっています。特に子どもの貧困率は2016年公表の県調査で29.9%と全国平均の2倍、大学等進学率は全国最下位の39.65%(2019年)であり、子育て・教育面での格差が大きく、沖縄の社会発展や人々の幸せにとって大きな阻害要因となっています。今回は、これまで長年解決できなかった経済や貧困の問題を世界・日本で最も先進的かつ充実した子育て・教育政策によって解決し、未来人材を育てる教育を実現する「おきなわ子育て・教育王国」の建国宣言を提言します。今年は、新たな沖縄振興計画がスタートし、沖縄県知事選挙が行われます。今回の提言が沖縄県の子育て・教育政策に活かされるために皆さんとともに議論し、行動していきます。
教育は民主的で平和な 社会をつくり、人々が 幸せになるためにある
教育というと授業、テスト、受験、部活動など具体的な教育場面をイメージされる方が多いと思います。もちろん、これらもそれぞれが大切なことではありますが、教育の最上位の目標は何でしょうか。教育は民主的で平和な社会をつくり、それを維持するためにあります。民主的で平和な社会をつくり、維持することができなければ、私たちは幸せになることができません。人間は誰だってすべて幸せであってほしいと私は思っています。また、人類が平和であり、一人ひとりが幸せだなと思って生きていける社会をつくることを目標に、家庭、学校、地域が一体となって、家庭、学校、地域が「変われるんだ」と子どもたちに示すことが最高の教育です。
沖縄県民すべてが 当事者として沖縄の 子育て・教育を考え、 行動する大切さ 教育は未来の社会を つくる投資
沖縄県には家庭、学校、地域が抱えている問題を解決し、未来人材を育てる教育を実現するために抜本的かつ先進的な教育改革が求められています。抜本的な改革とは、既得権益に縛られることなく、ヒト、モノ、カネの配分や流れを変えることです。ヒト、モノ、カネには限界がありますが、ネットワークによりこれを乗り越えることができます。沖縄県教育委員会の組織改革及び教育長・校長の民間登用や外国や他県との人事交流も含めた人事改革、教育のDX(デジタルトランスフォーメーション)、探究学習、非認知能力の育成、多様な学び、高校普通科改革、専門職大学の設立、大学までの無償化、OISTの活用などによって実行力を高めることが、おきなわ子育て・教育王国を実現する鍵だと考えています。子育てを終えた世代や教育に携わっていない皆さんにも未来の社会をつくる責任はあります。当事者意識をもって沖縄の子育て・教育を考え、行動して頂きたいです。
子どもの貧困問題と その解決、 子どもたち一人ひとりに 寄り添う教育
日本全体では7人に1人の子どもたち、およそ280万人が貧困状態にあり、沖縄県全体では4人に1人が貧困状態にあり、日本の中で最も深刻な状態にあります。貧困は世代間で連鎖すると言われ、貧困により学力不足を引き起こし精神的に未成熟なまま大人になってしまう場合もあります(以上 厚生労働省『平成28年国民生活基礎調査』)。私は沖縄の学力格差と貧困問題を非認知能力の育成と可視化によって解決できると考えています。これはペリー・プレスクール・プロジェクト(『ジュクタン』VOL・33森連載参照)の成果からも明らかです。そして、私は、国会議員、沖縄県議会議員、沖縄県各市町村長に対して非認知能力の育成と可視化による学力格差と貧困問題の解決に向けた要請を行っています。 家庭、学校、地域が子どもたち、児童生徒一人ひとりに寄り添い、誰一人取り残さない教育を行うことが沖縄だけでなく日本、世界で求められています。後ほど詳しく述べますが、教育のDXと個別最適化教育、経済的支援によって子どもたち一人ひとりに寄り添う教育を実現することができます。さらに、ひとり親の家庭の子育て支援やキャリアサポート、女性の活躍支援などを積極的に行うことによって貧困問題を解決することができます。沖縄県はこれらの最重要課題に取り組む必要があります。
未来を構想し、行動する未来人材を育てる教育
政府は2021年12月3日、教育再生実行会議の後継組織となる教育未来創造会議の新設を閣議決定しました。教育未来創造会議は、「わが国の未来を担う人材を育成するためには、高等教育をはじめとする教育の在り方について、国としての方向性を明確にするとともに、誰もが生涯にわたって学び続け学び直しができるよう、教育と社会の接続の多様化・柔軟化を推進する必要がある」ために設置されたものです。また、経済産業省未来人材室は2021年12月2日、2030年、2050年の産業構造の転換を見据えた今後の人材政策について検討するため、未来人材会議の設置を発表しました。今後、デジタル化や脱炭素というメガトレンドの中で産学官がどのような人材育成をめざすのかというビジョンを示すとともに、採用・雇用から教育に至る政策課題について検討が行われるとされています。以上二つの政府委員会の設置から日本では未来人材の育成が大きな課題となっていることがわかります。産業界や大学だけでなく、就学前、小学校、中学校、高等学校においても社会の変化に対応した未来人材の育成は最重要課題であり、新たな教育政策や家庭や学校での教育のチェンジが必要となります。 沖縄県は社会の変化を好機ととらえ、他県の教育に追い付け追い越せではなく、抜本的かつ先進的な教育改革を行うチャンスです。沖縄県で未来洞察に基づく未来社会づくりについて県、市町村、企業、学校、地域、家庭のそれぞれが当事者として考えることを提言します。昨年、視察しました東京工業大学や博報堂、トヨタ自動車、NECなどが取り組んでいる未来洞察の手法はとてもよくできており、沖縄県で実施することで未来志向を共有し、人々が希望を持ち、未来の社会づくりに参画することにつながると考えます。
探究学習は、世界を、 未来を変える!
探究は自分の在り方・生き方を深く考えたり、自分事として社会課題をとらえ、解決の道筋を探ったりする学習です。学校を卒業して社会に出てからも生涯必要な学びの姿勢です。例えば、台湾のデジタル担当政務委員であるオードリー・タン氏は、コロナ渦において、デジタル化された健康保険カードを活用し、マスク配給制度を迅速に作り上げました。このような社会課題の発見や解決も探究です。 2022年度から高校で新学習指導要領が実施され、古典探究、地理探究、世界史探究、日本史探究、理数探究基礎、理数探究、総合的な探究の時間などが新設され、探究に重点が置かれます。探究学習において最も大切なことは次の三つです。 ①各教科の知識を材料に、自分で課題を選び(課題の設定、情報の収集)、自分で組み立て(整理・分析)、自分で形にして(まとめ・表現)、自分なりの最適解・納得解を見出す。 ②自分と他者、自分と社会をつなげ、よりよく課題を発見し、イノベイティブに解決する。 ③予測困難な未知の状況でも、能動的・主体的に一人ひとりが深く考え、判断するとともに、チームで対話し、協働して課題解決を図る。 大学や企業が求める人材も、この方向に変わってきています。予測困難な未来に向けて、世の中のさまざまなことに目を向け、関心を持つ。そして、どうすればよりよく生きられるか、よりよい社会になるかという問題意識を持って、日頃から学習していくことが大切です。 沖縄県の小学校、中学校、高等学校で探究を柱とした教育活動を展開することによって児童生徒が「問い、考え、表現する力」を身につけ、社会の変化が激しく、将来の予測が困難なVUCA時代を生き抜くことができることを目指します。
非認知能力の育成が 子どもを伸ばす
自己管理、コミュニケーション、異文化適応、チームワークと集団行動、リーダーシップ、対人コンフリクト管理、状況認識、意思決定と問題解決など、数値化できない力を総合して非認知能力と呼んでいます。アメリカでは学力だけではなく、子どもを総合的に評価するアプローチが主流となっており、そこで重視されているのが社会的情動的教育(Social Emotional Learning)による非認知能力の育成だと先日、対談しました非認知能力教育の第一人者であるボーク重子さんから教えて頂きました。次の五つの能力がSELの五領域として体系化され、全米すべての州で子どもへの非認知能力の育成目標が法制化されています。
①自分を理解する能力
②自分を管理する能力
③他者を理解する能力
④他者と協力する能力
⑤責任ある意思決定をする力
の5つです。
また、非認知能力を育むために保護者や教員ができることは次の三つが重要です。
①安心・安全な環境をつくる
②子どもの主体性を育む
③外に向かって表現する、行動する
非認知能力を育む学校の教育活動として、学校行事等を通した体験活動、総合的な学習・探究の時間、LHR等の特別活動、生徒会活動、委員会活動、部活動などがあります。また、旅行、留学、海外生活などの経験も大切です。さらに、読書を通して、作者の人生や体験を追体験することもできます。私は中学3年道徳と総合的な学習の時間を融合させ、生徒一人ひとりが進路、キャリア、職業、社会、未来について考え、理解を深める授業を行ってきました。思考力・判断力・表現力や学びに向かう力を育むことを重視し、2020年度から拙著の探究教材『FUTURE』(SRJ)を使用し、テーマについての課題文をよみ、個人ワークやグループワーク等のアクティブラーニングを通して理解を深め、ワークの最後に100字~140字程度の文章にまとめることに取り組み、未来洞察を行う中で非認知能力を育んでいます。沖縄県全体でこのような教育活動が展開されれば、沖縄県の児童生徒の学力は全国トップレベルになります。
多様な学びに向けた 子どもの学びと自由な 時間の確保(部活動改革)
現在、日本は大きな課題を抱えています。経済的には、日本の経済的地位の低下と20年以上所得が伸びない問題があります。急速に円安が進み、円の弱まりが止まらず、50年前と同じ価値になってしまいました。イノベーションとそれを起こすイノベーション人材の育成が課題です。しかし、日本のこれまでの工業社会の画一的な教育ではイノベーション人材を育成することができません。画一的な学びから脱却し、多様な学びが必要です。しかし、子どもたちには多様な学びと自由な時間がありません。日本の多くの子どもたちは、学校の授業や宿題、部活動、塾通いで朝から晩までやるべきことがたくさんあります。特に部活動は日本固有の学校の教育活動であり、一定の役割は果たしてきましたが、長時間・休日練習などで子どもたちや教員が疲弊しているだけでなく、子どもたちが多様な学びや新しいチャレンジに向かうことへの阻害要因となっています。また、教員の働き方改革からも部活動の見直しが求められています。長野県飯田市教育委員会は、部活動の長時間化による生徒や教職員の負担を減らすため、2019年度から中学校の放課後部活動をしない「オフ期間」を設けています。2020年度のオフ期間(2020年10月下旬〜2021年1月下旬)終了後に生徒と教職員にアンケートを実施したところ、生徒、教職員ともほぼ半数が、オフ期間の設定に好評価の回答をしました。生徒も教職員も趣味や新しいことにチャレンジする時間が増えているそうです。 沖縄県は部活動のガイドラインの完全実施や部活動オフ期間の設定によって学力向上や未来人材の育成を実現することができ、教員の働き方改革を実現することもできます。一方で沖縄県の各学校はスポーツ、文化、芸術、学術などの部活動で全国レベルの活躍をしてきました。これらに対しては、プロフェッショナルや地域の人材を活用した支援を創設することによって高度な指導を受けることができるようになります。
教育のDX (デジタルトランス フォーメーション)
新型コロナウイルス感染拡大の中で学校教育ではオンライン授業が進み、児童生徒一人一台にタブレット端末環境の実現を目指したGIGAスクール構想が実現しました。Society 5.0時代に生きる子どもたちにとって、タブレット端末は鉛筆やノートと並ぶ文房具といっても過言ではありません。現在、仕事でも家庭でも、社会のあらゆる場所で ICT の活用が日常のものとなっています。一人一台端末環境は、もはや学校の「スタンダード」となりました。これからはこの環境を生かして何を教え、何を学ぶのかが重要となります。児童生徒一人ひとりに寄り添った学びの個別最適化や沖縄県の学力向上のために教育のDXは不可欠です。例えば、スタディサプリなどの学習動画を活用した反転学習(ビデオ予習型学習)、オンラインによる英会話学習、AIによる学習の躓きに対応した算数・数学学習、計算・漢字・英単語アプリの活用によるドリル学習、沖縄にいながらオンラインによって全国や海外の高校や大学の授業を受け単位として認めるなど大きな可能性があります。探究学習などのアクティブラーニングもオンラインで学ぶことができます。私が監修・執筆した探究学習教材『FUTURE』(SRJ)は、全国の広域通信制高校でも採用され、6000名以上がオンラインで探究を学んでいます。ここでは不登校の生徒たちの学び保障や進路保障にもつながっています。もちろん教育はデジタルだけでなくリアルの対面授業も大切であり、これからは対面とデジタルによるハイブリッドを活用した教育によって教育の質を高めることが主流になります。 沖縄県が教育のDXを全国で最も推進することによって、沖縄県の地理的・経済的に不利な条件を克服することができ、沖縄県の教育を質的に高めることができるとともに、沖縄県の大きな問題となっている不登校の問題を解決することができます。
高校普通科改革による 県立高校の魅力化
つての工業社会の人材育成のために存在してきた高校普通科が社会の変化の中で見直しを迫られています。高校生の七割が普通科に在籍していますが、激しい社会の変化の中で、グローバル人材、AI・IT人材、イノベーション人材、地方創生人材などの未来人材が求められています。これらに対応するために、高校普通科は、学際領域学科及び地域社会学科という新しい学科として再編することが2023年度から可能になります。これにより高校普通科の特色化・魅力化が推進されます。 沖縄県立高等学校普通科は早急に新学科への再編を行い、教科等横断的な学び、すなわち総合的な探究の時間等を柱とした探究学習、グローバル教育、地域学習等を積極的に行い、生徒一人ひとりが主体的・対話的・協働的に学び、変化の激しい社会の中で生き抜き、未来の社会を築くことができる人材を育成すべきです。また、小中高一貫校の創設も推進すべきです。
稼げる人材を 育てるための 専門職大学の設立
門職大学・専門職短期大学の制度が2019年に施行され、現在、専門職大学は全国に14校あります。専門職大学は、特定の職業のプロフェッショナルになるために必要な知識・理論、そして実践的なスキルの両方を身に付けることができる大学です。専門職大学等は、大学制度の中に、実践的な職業教育に重点を置き、産業界との密接な連携により、専門職人材の養成強化を図り、また、大学への進学を希望する方にとっても新たな選択肢が広がるものです。実学とは世の中の役に立つ学問であり、資本主義社会では稼げる人材の育成の教育ということになります。 沖縄県は全国で最も失業率が高く、高卒や大卒の就職率も低く、収入も全国最低水準となっています。これらの問題を解決するためにも時代の変化や産業界の要請である汎用性のあるスキルやアントレプレナーシップ(起業家精神)を学ぶことができる専門職大学を沖縄県に設立することは急務です。新設だけでなく専門学校が専門職大学を設立することも可能だと思います。県外に進学することなく、沖縄県内で学び続けることができることは大きなメリットがあります。私が客員教授を務める情報経営イノベーション専門職大学は、産業界の第一線で活躍する実務家教員から直接指導を受けることができる大学であり、高い専門性と実学志向、実習重視、起業率100%を目指すアントレプレナーシップ、情報・経営・イノベーションを学ぶことができる魅力のある大学です。このような情報・経営・イノベーションの専門職大学だけでなく、医療・保健・福祉、観光、芸術、文化、工業、農業、林業、飲食、環境など多様な専門職大学を設立することができます。沖縄振興策としての専門職大学設立は、未来人材の育成にとって不可欠です。専門職大学の特色は次の通りです(文部科学省HPより)。
●授業の三分の一以上は実習・実技
●理論と実践をバランスよく学べる(原則40人以下の少人数授業)
●超・長期の企業内実習で現場を体験できる(実習通算600時間以上)
●他分野も学べ、応用力が身につく
●学位が取得できる(大学卒として就職・留学・大学院進学ができる)
大学の授業料の 無償化によって 未来の社会を強くする
小学校、中学校は義務教育なので公立学校であれば授業料は無償です。また、高等学校について、高校授業料の無償化によって所得制限はありますが、公立学校だけでなく私立学校でも実質、授業料の無償化が実現しました。 一方、大学は国立、公立、私立のいずれであっても現在、授業料の無償化は実現していません。OECD加盟国を見てみると、大学の授業料を無償ないしきわめて安価としている国が多数存在します。オーストリア、コロンビア、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェーでは、公的な負担で教育費の9割が賄われ、36か国中13か国で8割以上の負担が公的に賄われています。一方、日本の公的負担割合はイギリスに次いで低く、わずか31%であり、家計負担を見ても、チリの次に高く53%に達しています。大学等の高等教育の充実は、個人の人格形成にとどまらず社会的な効果を持っています。世界では高等教育への投資が国の経済成長力の源泉となっていることが指摘され、世界経済において、高等教育は経済競争力の主要な推進力であることが広く認識されたことで外国では質の高い高等教育がかつてないほど重視されています(井手英策「民主主義とベーシックサービス」SSIR『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー日本版』参照)。 これらから日本の経済成長力の落ち込みと日本の国際競争力の低下を解決するためには人材育成、特に高等教育である大学教育の充実と日本人が高等教育にアクセスできるようにするために大学の無償化が必要であることを理解することができます。 沖縄県の大学進学率は全国最低であり、失業率は全国一高く、沖縄県民の収入は全国最低水準であることの関係性は先述の指摘からも理解することができます。沖縄県では家計負担の大きい大学への進学を諦める低所得家庭が多く存在します。また、大学卒業後、低所得でありながら巨額の奨学金という借金返済を背負いながら希望を失ってしまっている若者が多く存在します。沖縄県の経済成長、社会発展、人々の幸せのためには子育て・教育政策の充実が必要であり、特に大学の授業料の無償化を実現しなければ経済成長、社会発展、人々の幸せは望めません。これは最重要課題です。沖縄県の大学進学率を上げ、未来人材を育成し、未来社会をつくり、社会を強くして、人々の幸せを実現するためには財源が必要です。これには政治家の覚悟と有権者の判断が求められています。
沖縄科学技術大学院大学(OIST)を 拠点とした産業創出と 起業家支援 那覇から名護までの 西海岸のベイエリアを 日本のシリコンバレーに
学術出版のイギリス・シュプリンガー・ネイチャー発表の「質の高い論文ランキング」で日本第1位・世界第9位となった沖縄科学技術大学院大学(OIST)は名実ともに世界最高水準の研究機関であり、世界最高レベルの教授陣、学生、スタッフが集うだけでなく、巨額の予算が付き、最新の研究施設・設備が整備されています。毎年、OISTには沖縄振興予算から百億円を超える予算が使われていて、世界レベルの研究が行われ、優秀な研究者が輩出されています。その一方で巨額な沖縄振興予算が使われているが、地元の経済、教育、地域振興のためになっていない。OISTに百億円を超える予算が付くのに対して沖縄県の貧困対策には十億円程度しかつかないなどの批判の声が上がっています。これに対しては、OIST発の産業創出と起業家支援に巨額の予算をつけて沖縄だけでなく日本の経済成長の起爆剤とすることを提案します。OISTの在る恩納村だけでなく、那覇から名護に至る西海岸のベイエリアをアメリカ・シリコンバレーに匹敵する日本の産業創出と起業家支援の一大拠点とします。ここから世界企業が生まれます。OISTだけでなく、沖縄の西海岸に世界各国の一流大学の分校や研究拠点、インキュベート施設を税制優遇や補助金によって誘致すべきであると考えます。
参考文献・参考資料 ●森弘達『FUTURE』(SRJ) ●森弘達・ボーク重子『コレだけは知って おきたい!イマどき教育NEWS』 (NEA教育アライアンスネットワーク) ●SSIR Japan『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー日本版』(英治出版) ●ドラゴン桜2『親が知っておきたい学びの本質の教科書』(朝日学生新聞社) ●「未来人材を育てる」『月刊先端教育』2022年2月号(先端教育機構出版部) ●『朝日新聞』デジタル2021年12月30日(朝日新聞社)
森 弘達先生プロフィール
現在、学校法人大妻学院大妻中学高等学校主幹、国立大学法人東京学芸大学大学院教育学研究科(教職大学院)、学校法人電子学園情報経営イノベーション専門職大学客員教授、学校法人東京音楽大学指揮研修講座研修生、国分寺市介護保険運営協議会委員(国分寺市長委嘱)、国分寺市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画評価等検討委員会委員(国分寺市長委嘱)、国際バカロレアディプロマプログラム(IBDP)アドミニストレーター、東京と沖縄を拠点に教育活動を展開。探究、非認知能力、STEAM教育、医療探究などのセミナーや講演多数。著書に『ハイスコア!共通テスト攻略現代社会』(Z会)、『特化型小論文チャレンジノート志望理由・自己PR編』(第一学習社)、探究教材『FUTURE』volume.1・2・小学生版・STEAM探究教材『FUTURE』volume.3(SRJ)など多数。 2019年にスタートしたジュクタン×ジュンク堂書店那覇店プレゼンツ「森弘達先生 教育考演会」は4回を数え、小中高生・大学生・保護者・教員、研究者、経営者、政治家など幅広い参加があり、毎回好評。次回は2022年3月に開催予定。 学校法人昭和薬科大学附属高等学校・中学校教諭・進路指導部主任・生徒指導部主任・高校3学年主任・吹奏楽部顧問・ディベート部顧問、学校法人武蔵野大学附属千代田高等学院副校長、沖縄県沖縄次世代委員会委員(沖縄県知事委嘱)、浦添市未来まちづくり委員会委員(浦添市長委嘱)、浦添市てだこ市民大学運営委員・講師(浦添市長委嘱)、浦添市まちづくり生涯学習推進協議会委員(浦添市長委嘱)、一般財団法人日本私学教育研究所研究員、大前研一創設特定非営利活動法人政策学校一新塾講師を歴任。