2025年、大学入学共通テスト
どう変わる?なぜ変わる?

大学入試センターは、2025年(令和7年)から実施される大学入学共通テストの出題科目と科目の再編を公表しました。出題科目には「情報」が新設される他、現行の6教科30科目から7教科21科目に再編されます。再編のねらいや併せて公表された「情報」「地理総合」「歴史総合」「公共」のサンプル問題から入試の変化とそのポイントを森 弘達 先生が読み解きます。

現中学3年生が大学入試を迎える 2025年から新大学入試がはじまる

2021年度の中学3年生が大学入試を迎える2025年から、学習指導要領の改訂に伴う新大学入試がはじまります。今年から実施された大学入学共通テストは2025年1月から新科目に変更されます。  変更のポイントは、「情報」が試験科目として新設される他にも、地歴公民は、日本史と世界史を総合した「歴史総合」、地理情報システム(GIS)についても学ぶ「地理総合」、現代社会から変更になる「公共」、探究科目として「地理探究」「日本史探究」「世界史探究」が新設され、共通テストの出題科目としては、「地理総合、地理探究」「歴史総合、日本史探究」「歴史総合、世界史探究」「地理総合、歴史総合、公共」「公共、倫理」「公共、政治・経済」の6科目に大きく再編されます。数学はこれまでと変わって、「数学Ⅰ」「数学Ⅰ、数学A」「数学Ⅱ、数学B、数学C」(数学B・数学Cについては、各2項目出題のうち3項目を選択解答)の3科目に再編されます。理科は現行の基礎科目を一つにまとめた「物理基礎、化学基礎、生物基礎、地学基礎」(いずれか2科目の内容を選択解答)と「物理」「化学」「生物」「地学」などの基礎を付さない科目との5科目に再編されます。  「国語」は1科目、外国語は「英語」「ドイツ語」「フランス語」「中国語」「韓国語」の5科目で変更はありません。  共通テストは現行の6教科30科目から7教科21科目へとスリム化されます。これまで共通テストのCBT化(コンピュータ等での実施形式)が検討されてきましたが、2025年の共通テストではCBT化は見送られ、従来通りのペーパーテストでの実施となります。  「情報Ⅰ」は学習指導要領で必修科目となり、共通テストでは、加速するDX(デジタル・トランスフォーメーション)時代を生きるために必要とされるプログラミング的思考をベースに「思考力・判断力・表現力」が問われることになりそうです。「公共」は、18歳参政権や18歳成人への移行に伴う若者の社会参加、政策についての合意形成などが問われることになりそうです。  2025年の共通テスト再編のベースには2018年(平成30年)告示の学習指導要領改訂があります。改訂に込められた、子どもたちの生きる力を育み、学んだことを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性」の涵養、社会や生活で生きて働く「知識・技能」、未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力」の三つの柱が新大学入試で問われることになりそうです。

会話形式の長文から思考の 図解化まで。 論理的思考力を問う内容

大学入試センターは、2025年の共通テストにおける新科目である「情報」「地理総合」「歴史総合」「公共」のサンプル問題を公表しました。ここでは、「情報」のサンプル問題をみてみましょう。第1問は4つの小問があり、問1は東日本大震災時の情報通信のあり方や情報技術の仕組みやメリット、情報社会と人との関わりの理解を問う問題です。問2は学習成果発表会での生徒たちの発表内容の図解化であり、情報デザインの問題です。問3はアナログからデジタルへの変換に関する問題であり、実社会で活用されている知識や技術が問われています。問4はIPアドレスと基数変換、2進法に関する問題です。第2問は、18歳選挙権がテーマであり、比例代表選挙におけるドント式、アルゴリズムとプログラミングなどが出題されています。共通テストではCBTは見送られ、ペーパーテストで実施されることになるので情報処理自体は求められていませんが、現在の中学3年生が来年度に高校に進学して必修となる「情報Ⅰ」の教科書には「Python」「JavaScript」などのプログラミングが掲載され、プログラミングは必修となります。プログラミングは経験することが重要であり、成功体験、失敗経験を繰り返し、プログラムを修正・改善していくことに意味があります。この経験は、他の教科科目でも論理的に物事を考えていくことに応用できます。プログラミングの経験は社会の様々な場面で役立ちます。第3問は、強いサッカーチームと弱いサッカーチームをサッカー部のマネージャーがワールドカップのデータを使って分析するというデータ活用の問題です。分析結果の解釈、統計量(分散、標準偏差、平均、最小値、四分位数)の意味、クロス集計表の意味などが出題されています。  全体的な印象として、長文や図表が多くなっています。特に、登場人物の会話を通して長文から文脈を読み解くなどの「読解力」が求められています

[森 弘達先生プロフィール]

現在、学校法人大妻学院大妻中学高等学校主幹、国立大学法人東京学芸大学大学院教育学研究科(教職大学院)、学校法人電子学園情報経営イノベーション専門職大学客員教授、学校法人東京音楽大学指揮研修講座研修生、国分寺市介護保険運営協議会委員(国分寺市長委嘱)、国分寺市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画評価等検討委員会委員(国分寺市長委嘱)、国際バカロレアディプロマプログラム(IBDP)アドミニストレーター、東京と沖縄を拠点に教育活動を展開。探究、非認知能力、STEAM教育、医療探究などのセミナーや講演多数。著書に『ハイスコア!共通テスト攻略現代社会』(Z会)、『特化型小論文チャレンジノート志望理由・自己PR編』(第一学習社)、探究教材『FUTURE』volume.1・2・小学生版・STEAM探究教材『FUTURE』volume.3(SRJ)など多数。 2019年にスタートしたジュクタン×ジュンク堂書店那覇店プレゼンツ「森弘達先生 教育考演会」は4回を数え、小中高生・大学生・保護者・教員、研究者、経営者、政治家など幅広い参加があり、毎回好評。次回は2022年3月に開催予定。 学校法人昭和薬科大学附属高等学校・中学校教諭・進路指導部主任・生徒指導部主任・高校3学年主任・吹奏楽部顧問・ディベート部顧問、学校法人武蔵野大学附属千代田高等学院副校長、沖縄県沖縄次世代委員会委員(沖縄県知事委嘱)、浦添市未来まちづくり委員会委員(浦添市長委嘱)、浦添市てだこ市民大学運営委員・講師(浦添市長委嘱)、浦添市まちづくり生涯学習推進協議会委員(浦添市長委嘱)、一般財団法人日本私学教育研究所研究員、大前研一創設特定非営利活動法人政策学校一新塾講師を歴任。