
食品ロスと子どもの貧困を同時に解決するソーシャルビジネス〈エコイート〉。理事・玉城淳一郎氏と
那覇与儀店店長・郁子氏が那覇日経ビジネス専門学校で語った「逆風を資源に変えるキャリア」とは?
学生からの鋭い質問にリアルで答えた熱い90 分。ロスを価値に変える現場の裏側も公開。キャリア選択のヒントが満載だ。
那覇与儀店店長・郁子氏が那覇日経ビジネス専門学校で語った「逆風を資源に変えるキャリア」とは?
学生からの鋭い質問にリアルで答えた熱い90 分。ロスを価値に変える現場の裏側も公開。キャリア選択のヒントが満載だ。
社会課題をビジネスで解決する
今回は那覇日経ビジネス専門学校のキャリア教育プログラムとして、NPO法人日本もったいない食品センター理事の玉城淳一郎氏とエコイート那覇与儀店店長の玉城郁子氏が来校。「社会課題をビジネスで解決するキャリア」をテーマに講義と質疑応答を行った。冒頭、玉城氏は沖縄で年間約6.1万トンの食品が廃棄され、子どもの貧困率が29・9%という二重苦を提示し「食を届けられなければ教育も始まらない」と問題提起。賞味期限間近や規格外で行き場を失った食品を買い取り10円から販売し、その利益で生活困窮世帯を支援する〈エコイート〉の循環モデルを解説。2023年には全国で3,235トンの食品ロス削減と5,000世帯支援を達成、沖縄単独でも約30トンを回収した実績に教室がどよめいた。エコイート沖縄誕生の経緯も披露。玉城夫妻は元学習塾経営者だったが、2019年にテレビで本部の活動を知り翌日メールで加盟を打診。

逆風を資源に即行動
2020年、コロナ融資を活用して糸満に1号店を開業し、現在は那覇と合わせ2店舗体制。「逆風は資源になる」という即行動の姿勢が学生の心をつかんだ。売場では安売りを禁句とし、什器の高さと色をそろえ価値を演出。客を「仲間」と呼び、スタッフが必ず声をかけ賞味期限と消費期限の違いを解説する「対話型接客」が特色だ
質疑応答では学生から鋭い質問が相次いだ。まず「沖縄特有の食品ロスは?」に玉城氏は「製造業が少なく本土から運ぶため卸段階でロスが出やすい。高温多湿で炭酸飲料のガス抜けも早い」と回答。別の学生が「店で一番人気の商品は?」と尋ねると郁子店長は「カルピスソーダ限定フレーバーや海外仕様のキットカットなど、毎回「お宝」が違う。来店そのものが宝探し」と紹介。さらには「コンビニのロス対策は?」という質問に「半額セールや冷凍食品強化で廃棄を減らす流れが加速している」と業界の潮流を説明した。職活動中の学生から「成功の鍵は?」と問われると、玉城氏は「メンターと仲間、そして相棒を持つこと。私の相棒は妻です」とアドバイスした。
講義の締めくくりに玉城氏は「見て・活かして・広げる」の三手を提案。①店舗を訪れ体験し、②学びを家族やアルバイト先で実践し、③SNSで共有して仲間を増やす̶̶小さな行動が社会を動かすと訴えた。「やりますと宣言して即行動する人だけが景色を変えられる」という言葉に、
多くの学生が力強く頷いた。
玉城夫妻は現在、県内企業との協業や無人店舗の実験を進め、若者自身が“つくる側”として参加できる場を増やしたいと語る。食品ロスと貧困を同時に解決する挑戦は、学生たちのキャリア観に新しい選択肢を提示し続けている。


