はじめまして。根上春です。色んな人が数学を楽しめる場所づくりを目指して活動するNPO法人数学カフェの代表理事です。
今回から5回のシリーズで、NPO法人数学カフェのメンバーが色々な数学の楽しみ方についてご提案します。お楽しみに!

数学を好きになったときのこと

私が数学を好きになったのは高校生のときです。最初のテストであまり成績が良くなかったので、むしろプレッシャーがなくゆったりと問題に向き合うことができ、自由に考えることを楽しめました。学校で配られたたった一冊の問題集に集中し、証明をじっくり読んで、一行一行、完全に理解するまで考えました。そして、自分でも証明が出来たら、他の解き方は出来ないかと何通りも考えてみました。自分なりの証明を見つけた時はとても嬉しかったです。新しい証明を見つけるということは、たとえば、図形の問題を数式で解くなど、その問題を説明する新しい言葉を創り出すということでもあります。誰かに教えられたことをそのまま繰り返すだけではつまらない。自分の力で、新しい解釈や新しい表現を生み出せることがとても楽しかったのです。

フアン・グリスによるピカソの肖像

ピカソの絵と数学のつながり

今年の1月に、パブロ・ピカソなどの作品が展示されている「キュビズム展」に行ってきました。キュビズムとは20世紀前半に起こったアートの技法や運動です。それまでの西洋絵画は、目で見たものを極力そのまま描くものが主流でした。しかしキュビズムは違います。たとえば「目」「鼻」「口」と、描きたいものを要素にわけて、まるでお正月の福笑い遊びのように、画面の上で配置を大胆に再構成します。目は正面から描き、口は横から描く、というように。この発想がとても斬新で、一大ムーブメントになりました。それまでにない全く新しい表現を作りあげたことで評価されたのです。

目に映るものを色んな観点から捉え直し、新しい解釈を与えることは、数学ととても良く似ていると思います。たとえば、今目の前に「イヌ」「サル」「キジ」がいたとします。このとき「全部で3匹。お供にするならきびだんごは3つあれば大丈夫。」と数えることができるのは、目に見える「イヌ」「サル」「キジ」「きびだんご」の種類を無視して、「個数」という要素で捉え直しているということなのです。

ピカソを初めとするキュビズムは数学にも影響を受けていたようです。数学ってなんの役に立つんだろう?と思うこともあるかもしれませんが、そんなときはちょっと気楽に、大胆に、空想を広げてみましょう。自分なりの数学の見方、生かし方が見つかるかもしれません。

パブロ・ピカソ「The Red Armchair」

NPO法人 数学カフェ

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