第1回担当 中原 結愛 (昭和薬科大学附属高等学校 ディベート部 高校2年生

この冊子を手に取ってくださった皆さん、はじめまして。 2022年の『ジュクタン』では、私たち昭和薬科大学附属高等学校・ 中学校のディベート部員がリレー形式で記事を書かせていただく ことになりました。私たち中高生がどのような視線で「今」を 見ているのか伝えていきたいと思います。

SDGsと 日本のエネルギー

地球規模の課題である気候変動問題の解決に向けて、2015年にパリ協定が採択されました。  それを受けて日本政府は、2020年10月に「2050カーボンニュートラル」の実現を目指すことを宣言し、2021年に「第六次エネルギー基本計画」を決定しました。  この計画では、石炭を始めとする化石燃料の脱炭素化や原子力発電、再エネルギーの拡充が盛り込まれました。特に、再エネルギーは二酸化炭素の排出を減らす有効な手段として注目されていますが、日本は欧米諸国に比べてその普及に遅れをとっています。  理由としては、日本が地域ごとに日照時間が異なり、太陽光発電が浸透しにくいことや、島国という地理的条件によって欧米のように周辺諸国と協力しながら電力を利用することが難しいことなどが挙げられています。

『パリ協定と カーボンニュートラル』

パリ協定では
▼世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1・5℃に抑える努力を追求すること(2℃目標) ▼今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成することの二点について合意しました。 カーボンニュートラルは、温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにする取り組みです。

日本が持つ 再エネ拡大の切り札

では、日本では再エネルギーの発展は見込めないのでしょうか? いいえ、そんなことはありません。  長崎県五島列島五島市の例を見てみましょう。  五島市では電力構成の5割強を再生可能エネルギーが占めています。しかも、それはたった一基の洋上風力発電によるものです。設置に制限の少ない洋上風力は、近年その利用が世界的に注目されており、海に囲まれた日本では特に期待が高まっています。  日本政府は洋上風力発電を火力発電に代わる主電源への切り札としているようです。今後は、五島列島以外の地域での洋上風力発電の適性調査や、大都市の電力消費を賄えるようなエネルギーの量産化が課題となっています。このまま再エネルギーの取り組みが進んでいけば、かつて石炭から石油に転換したエネルギー革命のように化石燃料から再生可能エネルギーへの大転換になるかもしれません。  再エネルギーの利用は、SDGs13「気候変動に対する具体的な対策」となるだけでなく新たな産業基盤を作りだし、クリーンエネルギーとしてより多くの人に利用されることで、2050カーボンニュートラルを達成し、持続可能な日本の発展を支えてくれます。

洋上風力の潜在力

日本風力発電協会によると、浮体式洋上風力発電は424GWと言われており、その潜在力は原発約400基分に匹敵するそうです。すごいですね。


※テンションレグプラットフォーム型 の浮体式洋上風力発電施設 (大林組HPより)

SDGsに向けて 取り組む企業・自治体

政府が主導するSDGs実現に向けた再生可能エネルギーの取り組みに賛同し、協力する企業や自治体も増えています。例えば、「低炭素企業グループ・アクションプラン」を推進するキリンホールディングス、再エネ100%を目指す「RE100」へ参画する味の素グループ、炭素削減活動に投資することで温室効果ガス排出を相殺する「カーボンオフセット」に取り組むカルビー。このように大手企業も脱炭素に向けて積極的に取り組んでいます。  また、沖縄県でも再エネへの取り組みは活発になっており、 沖縄ガスニューパワーでは再エネ100%のプランによる電力供給を展開し、宮古島では「宮古島市版SDGs」を打ち出し、エコアイランド実現に向けた取り組みを進めています。

SDGsウォッシュ

SDGsの理念をきちんと理解し、目的意識や課題意識をもってさまざまな活動に取り組む企業がある一方で、うわべだけの「SDGs」をうたうケースもあります。これを「SDGsウォッシュ」と言っています。例えば、特別な活動はしないけれどもホームページや会社にSDGsのロゴを載せたり、企業の通常の業務をSDGsの目標と単純に結び付けたりというケースです。このようなことが起こる背景には、SDGs企業ランキング上位であることが一種のステータスになることや、SDGsをアピールすることが企業のクリーンなイメージにつながるという社会の風潮もあるのでしょうか?SDGsなしには「消費者に選ばれない」という思いが「SDGsウォッシュ」を生み出すのかもしれません。SDGsは本来、その理念の下で適切な取り組みが行われて達成に向かうものです。しかし、SDGsの評価の難しさは、何をもって適切な取り組みと言うのか、そもそも全地域で同一に定義付けしてよいものなのか、ということが分かっていないことです。それが消費者にとっては「〇〇というSDGsの取り組みをしています」と言われると 「それは良い企業だ」というふうな評価をする原因となってしまっているのではないでしょうか。  私たちにできることは、SDGsという言葉だけを評価するのではなく、企業が実際に行なっている活動を関心を持って調べてどのようにSDGsに貢献しているのかを自身で考えることだと思います。  消費者が不断の検証を行い続けることが適切な評価を生み出し、企業にとってもより良い取り組みをすることにつながるように思います。  SDGsの意義は「国連が、」「政府が、」「社会が、」のように権威に預けるのではなく、消費者が自分なりに考えることが求められています。

Z世代とSDGs

1990年代後半〜2000年代生まれの人々を指し、1980~90年代前半生まれのY世代に続く世代のことです。物心がついたときからすでにデジタル技術が発達していて、インターネットやオンラインの世界に慣れ親しんでいるという点が特徴です。そのため、デジタルネイティブとも言われています。  かつては、自分が欲しい情報はテレビ、新聞、ラジオ、地域の掲示板など様々な媒体から探し出すことが求められていましたが、私たちは日常的に大量の情報が押し寄せてくる環境におり、しかもその情報は流れてくる過程で自身の好みに沿ったものに最適化されています。こういう情報に対しては《疑う》心を持ちづらく、限られた範囲の情報が知らない間に私たちの価値観や行動に影響を与えていることが指摘されています。デジタルネイティブはデジタル世界に存在する情報との向き合い方に関しては、情報弱者なのかもしれません。


※SDGsという言葉の認知・理解MarkeZine 2022.1.28記事より抜粋

Z世代として

地球温暖化を初めとする環境問題、人種やジェンダー、貧困といった現代社会が抱える問題が山積みになり、その答えも分からない時代に私たちは生まれ、大人たちが頭を抱えながら解決策を模索する姿を見てきました。そして、その解決の担い手は私たちの世代に引き継がれようとしています。  日々の学校生活でも、主体性を身に付け、思考力や判断力を養い、答えの無い問題に立ち向かうように言われています。ある意味では、大人世代からの強いメッセージではないでしょうか。高校生である私たちはSDGsと聞いて何を考え、理解し、どう動いていくべきなのか。「正しい」と言われる事が、「正しい」と信じる事が、なぜ「正しい」のかということを自分自身に問いかけることが一歩踏み出して行動することと同じくらい大切だと私は思います。行動することを否定するわけではありません。ただ、思考を停止してはいけないと思うのです。たくさんの人の意見を聞き、自分の頭で考えて、自分なりの理解の上で行動を継続していくことが大事だと思うのです。  私たちは考え続けなければなりません。「なぜ17個の目標なのか」「なぜ2030年という期限なのか」「なぜ私たちが」「なぜ、、、」 etc…ナンバーに囚われない 、17に留まらない、自分なりの18個目の目標を考えていくことが強く求められているように思います。